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03.ロボ課長

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1日目

「ねえ、聞いて!」
「うちの課って、課長が部長に昇進してから、課長席が空きだったじゃない。
 しばらくは、部長が兼務してたんだけど、それじゃあって、新しい課長が来ることになったの。」
「そしたらねえ!
 なんと新しい課長は、誰だったと思う。
 驚くわよ・・・違う、違う、いくらなんでも、あの田中君は課長にはなれないでしょう。
 えっ、わたし?ちょっと、それないって。
 ヒント!
 人間じゃないの・・・えっ・・・当りい!!!
 そう、ロボットよ。
 ロボ課長なの。」
「前から売り込みに来ていたんですって。
 管理職の代わりをこなすマネージメントロボットよ。なんでも、マネジメント職の方が、私たちの作業より機械化しやすいそうよ。
 と言っても、そこはさすがに役員も半信半疑だったんだけど、いろいろ資料も見せられて、実績も教えてもらったらしいわ。
 そこへ、総務部で課長のポストに空きがあるからって、実験的に導入することになったの。」

「でもねえ、ロボットにあぁしろ、こぉしろ言われるのよ。
 人間よりロボットの方が偉いなんてね。私らはロボット以下なわけ?
 うん?
 あっ、そうか。
 カーナビと思えばいいのか。
 『まもなく、右方向です。しばらく、道なりです。』
 めちゃうける。
 有難う、頑張るわ!!」

翌日

「どうかって?
 ロボってさあ、上司のクセにめっちゃ敬語なの。
 『すいませんが、なになにしてくださいませんか』
 『少しよろしいでしょうか』とかね。」
「でもねえ、ときどき気持ち悪いの。
 気がつくとランプなんかチカチカさせて、一生懸命こっちを見ているの。
 分析されている感じがするの・・・カリカリ、カリカリ、ハードディスクに一生懸命書き込んでいるのよ。」

「課長補佐が、ときどきロボに呼ばれて仕事の説明をしていたわ。
 でも、あの人も可哀想よね。
 次はいよいよ自分が課長か、と思っていたら、なんとロボが『課長』なんだから。
 でも結構たいへんよ。
 すこしでも、曖昧なことを言うと、『よくわかりません。もう少し明確な言い方をお願いします』って、何回も言い直しなの。
 さすがに、課長補佐もぐったりしていたな。
 でも、えらいわね、ロボって、一度聞いたことは絶対聞き返さないんだから。
 私なんか、『何遍同じことを言わせるんだ』って、いつも怒られているのに。」

また、翌日

「ロボちゃん、ちょっと見直したわ。
 えっ、『ロボちゃん』に昇格かって。
 まあ、仕事もできるしね。
 ちょっとロボ課長も有りかな。」

「私、ずっとアンケートの打ち込みとか、していたじゃない。
 だって、一番下っ端だったし、おツボネがやれって言うんだもの。
 そうしたらね、今日ロボちゃんが、『その仕事は山本さんのほうが適性が高いので、今後は貴方がやってください』って言ったの。
 山本さんって、おツボネのことね。
 で、私には社内報の企画や編集が割り振られたの。
 もう、社歴や声の大きさは関係なしでね。
 もちろんおツボネは文句を言ったわよ。
 『それは、ずっと社歴の浅い人の仕事と決まっていましたから、今さら私はしたくありません。抗議します!』って食ってかかったの。
 あの人迫力あるのよ。
 前の課長も、相当押し切られていたんだから。
 本当にどっちが上司かってくらい。
 でも、さすがはロボちゃん、顔色一つ変えないの。
 当たり前か・・・。
 『すみませんが、私は皆さんの適性から、一番相応しい仕事を割り振っています。
  皆さんの社歴とか、立場より、この部署が一番生産性を上げることを優先します。』
 そうしたら、おツボネが真っ赤になってね、『後から来てむちゃくちゃ言わないで!私達のモチベーションが下がったらどうすんのよ!!』と言い返したわ。
 ロボちゃん、すかさず『そこは考慮しています。もし、貴方のモチベーションが下がっても、部署全体の生産性が向上すれば、私はその方を選びます。』って。
 キツイわよね~。
 さすがにおツボネもそれ以上言い返せなかったもん。
 ああ、スッとした。」

一ヵ月後

「どうって?
 まあまあね。
 課長?
 うん、大活躍よ。
 そう、人当たりもいいし、基本敬語だし。
 何度同じことを聞きなおしても怒らないしね。
 それでも、何遍か同じことを質問したら、なんとマニュアルを作って送ってくれたのよ。
 あと、この間やりきれない仕事があって相談したの。そうしたら夜の内に仕上げてくれたの。だって寝なくてもいいもんね。
 童話の『靴屋と小人』みたいでしょ。」
「公平だし、いつも効率を考えてくれるし、私たちのやる気のことも織り込み済みだし。
 無駄な残業や、会議もなくなったのよ。
 随分人も移動したけど、ちゃんと仕事は回っているもんね。
 いかに無駄が多かったかって話よね。
 仕事の内容も変わったわ。
 そっ、会社にいくのが楽しくなったみたい。」
「そういえば、上の方は他の課に導入することも考えているらしいわ。
 そのうち、全部ロボ課長にかわるかもね。」

三ヵ月後

「いままで月末に数字を締めて部長に報告に行っていたのね。
 そしたら、ロボちゃん『今月からそれは必要ありません』って言うのよ。
 『何故ですか?』って聞いたら、『データで直接通信できますから』だって。
 ヘンだな~と思っていたんだけど、ある時用事があって上の階に行ったのね。
 そうしたら、なんと、部長もロボになっていたの。
 ロボちゃんの上司のロボ部長ね。
 そう言えば、最近やたら稟議や決済が早かったわ。
 うわさだけど、社長はすべて管理職をロボットにするつもりらしいわ。
 役員報酬より、ロボットのレンタル料が安いし、何倍も働くしね。
 でも、社長には、自分もロボットにとって変わられるという発想はないのかしら。」

半年後

意外に早くその日は来た。
気がつけば、社長以下、役員も、管理職も全員ロボットに置き換わった。
人間は私達平社員だけ。
効率はいいけど、でも、こんな会社っていったい何なんだろう。

その日の朝は、いつものように出社した。
でも、部屋の扉の前では、なにか違う感じがした。
始業前のその時間は、みんなが着替えたり、おしゃべりしたり、ザワザワとしているのに、今日は妙に静かなのだ。
そして、扉を開けた眼の前の光景は・・・。
・・・
「あ、吉川さん、おはようございます。
 みんなに紹介しましょう。
 こちら社歴の一番古い、ニンゲンの吉川さんです。」

ロボ課長の声に反応して一斉にこちらを振り向いた『ロボ平社員』の群れ!!
「ヨロシクお願いします。」
「ヨロシクお願いします。」
「ヨロシクお願いします。」
・・・
えぇぇぇぇぇ!!!助けて~え!!!!

(おわり)